○●雨色ドレス●○
『――以上で本日のピーターパンの開演を終了いたします。ご来場ありがとうございました。お帰りの際は……』


場内アナウンスが響く中、ユウの携帯がブルブルと揺れた。


ユウはサブディスプレイを見つめて、開いて、すぐに閉じた。


「あっ、電話? 席離れようか?」

僕が立ち上がると、ユウは携帯を手に握りしめたまま、僕を見上げた。


そして、「ん、メールだったから大丈夫」と笑って立ち上がり、妙な間を作ると、早々と出入り口へと歩きだした。

「そっか……あっ、バンダナ貰いにいこっか」


「うん」

「……ユウ元気ないね」

「んなこたねーし」

「怒ってる? 途中で話かけちゃったから」




「ちげーし……ピーターパンが可哀想だなーって思っただけ」

ユウは僕と目を合わせる事なく、つぶやいた。

「可哀想?」

「だって、子供たちはみんなネバーランドから帰ってきてさ、結局ピーターパンは一人ぼっちになっちゃったじゃん? だから可哀想だなーって」

またもや意外だ。


金髪で耳が穴だらけのユウが、こんな真面目にピーターパンを語り出すなんて……


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