○●雨色ドレス●○
「ユウ!」
後を追いかけようとする僕にスーツ女が振り返り言った。「君、あのね」
ユウは、やっぱり僕を見ようとしない。
「こいつはね、ユウじゃないのよ。ごめんなさい。ほら、いくわよ」
ごめんなさいって何だよ。分からないよ。
ユウはユウじゃないか。
「ケンケン……」
やっとユウが口を開いた。
「ユウ、これってどういう事?」
「ケンケン、ごめんね」
なんだよ
ごめんじゃ分からないって言ってるだろ。
急にいなくなるなよ。
その言葉達を僕は言えなかった。僕はユウの恋人でも何でもない。
遠くなるユウの背中。
その日ユウと一緒に歩いた道を、帰りは僕一人で歩いた。