○●雨色ドレス●○
「ひゃー、ケンケンちょい待ち待ちまちぃぃ飛ぶな記憶! あっ、あたしこいつに用あるんでー!」


さぁ気持ちよく意識を失おうとした瞬間、脳みそが揺れてクラッシュしそうなくらい、胸ぐらを掴まれ揺らされた。

アルコールとタバコと香水がごっちゃ混ぜになった香りがする。ゆっくり目を開けると、首まで真っ赤になったユウが……いや、トモコが僕にまたがっていた。


髪の毛はカラスみたいに真っ黒で、メイクもほとんどすっぴんに近いけど確かにこの人は


ははっ……これは夢ですかね?



「秋葉?」

チバがトモコに言った。
「ひゃ? あー! テベちゃんじゃーん!」

トモコがチバを指差して声を張り上げる。揺れが激しくなって、僕の腹にディープなブロウが入った。(さっき飲んでた野菜ジュースがでちゃいます!)

「だからテベじゃなくてチバって呼べよ! つうかお前酒臭っ!」


一気に血の気が引いて、次第に僕の意識もくっきりすっきりはっきりになった。



つうかなんでこの人(アキバトモコ)がこのコンビニに?

……この危うい現状を打破しなくちゃ。とりあえずこの危険人物を店内から出そう。



「チバごめん。休憩10分延長してもいい?」


チバは目を輝かせながら「おう!」と言った(絶対この人楽しんでる)。



「……こっち」

「ひゃーい」

僕はでろんでろんに泥酔したトモコの腕を掴み、店の外へ出た。
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