森守の令嬢はもふもふ大型獣人に執愛される
 花瓶が置かれたテーブルの下の壁の隅っこに、小さな落書きを見つけた。

 たくさんの丸が連なったようなおかしな落書きだが、よく見るとクマのように見えなくもない。

 その小さな落書きのすぐ下に、グチャッとした字で『エデタ』と書いてあったものだから、ロキースは湧き上がる愛しさで死にそうになった。

 だって、随分前とはいえ、エディがクマの絵を描いていたのだ。嬉しくないわけがない。

 しばらくして、ノックの音がした。

「こんにちは、ロキース」

 そう言って現れたのは、くすんだ灰茶色の髪にくりくりとした目を持つ少年──エディだった。

 今日の為なのか、その顔にはうっすらと化粧が施されている。

 ロキースはしばらくエディを見つめて、困惑したように眉を下げた。
< 130 / 390 >

この作品をシェア

pagetop