森守の令嬢はもふもふ大型獣人に執愛される
『エディはまだか?』

 その言葉を聞いて、エディは「ああもう!」と被っていた帽子を外して床に投げつけた。

 帽子の中に入れ込んでいた長い髪が、ハラハラと肩の上に落ちてくる。

 エディに似ていて、髪が長い人──それは、彼女の双子の弟ミハウに他ならない。

 早々に看破されたことに、ミハウは不満なようである。

 彼は唸りながら、地団駄を踏んでいた。

「なんで分かっちゃったの? 僕たちの取り替えっこは完璧なのに。今日は念入りに化粧までして似せたのに、どうして?」

「取り替えっこ……? よく分からないが、きみがエディでないことだけは分かるな」

 ケロリと答えられて、ミハウは鳩が豆鉄砲を食ったような顔をした。それから思い出したように、唇をへの字にして眦を吊り上げる。
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