森守の令嬢はもふもふ大型獣人に執愛される
(変なの)

 ロキースの手は、温かい。

 もっと強く握ってくれてもいいのに、とエディは思ったが、言うのは恥ずかしいので黙ったままギュッと手を握り返した。

 魔の森の中を漂う薄紫のモヤのような魔素は、まるで濃い霧のようだ。

 上を見れば、皺だらけの老人の手のような枝が、天を隠すように伸びている。

 枝の合間から差し込む光が、魔素を通過して地面を照らす。

 それはまるで足元を照らすランタンのように、点々と続いていた。

 ロキースの足取りに、迷いはない。

 人を惑わせるこの森は、獣人には効果がないらしい。
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