森守の令嬢はもふもふ大型獣人に執愛される
 馬で乗り込んで来て「娘が死ぬ!」と騒ぎ立てられたから、さぞ緊急だろうと急いで来てみれば、患者はただの知恵熱。医者がそうなるのも無理はない。

 しかし、両親がそうなるのも無理からぬことなのだ。エディは健康優良児で、風邪だってほとんどひいたことがない。

 そんな彼女が目の前で倒れたのだから、そりゃあ血の気も引く。

「知恵熱は、赤子が発症するものだがね。大人だと、ストレス性高体温症と言う」

 まさか知恵熱だなんて思ってもみなかった両親は、緊張の糸が切れたようにヘナヘナと床に座り込んだ。

 そんな両親に、医者は淡々と答える。

「原因は、強いストレスや極度の緊張状態。又は、長期に渡るストレスや疲れ。ヴィリニュスのお嬢さんなら、思い当たる節など山ほどあるでしょう。風邪ではないので、薬では治せません。とりあえず、しばらくはゆっくり休ませてください」
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