森守の令嬢はもふもふ大型獣人に執愛される
 きっと一生懸命、頑張って言ったのだろう。

 男女の距離を気にする彼女の精一杯が、その言葉に詰まっているようだった。

 婚前の男女が一つ屋根の下で夜を過ごすことは、彼女の常識では有り得ないことのはずだ。

 それでも、彼女は恥を忍んでそう言ったのである。

 ロキースは、エディの言葉をしばらく反芻する時間が欲しくて、もう空っぽのティーカップを口につけて飲んだフリをした。

 そろそろお泊りも良いのではないか。

 そう思ったこともある。

 だが、彼女の指を舐めるという前科がある以上、一晩紳士でいる自信など、ロキースにはなかった。

 ここはやはり、帰すべきだろう。
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