森守の令嬢はもふもふ大型獣人に執愛される
 踏み込んで、改めて綺麗だとロキースは思った。
 幻想的な風景だ、と。

 青い花しかないと思っていたが、よく見ると白い花も混じっている。

 空は夕焼けに染まり、青と赤のコントラストが美しい。

 長年魔の森に住んでいたロキースだが、ここへ来るのは初めてだった。

「まるで、意図的に隠されているような……」

 静かに呟いた、その時だった。

 ざぁぁぁぁぁ、と。少し強めの風が吹いて、花を攫っていく。

 ハラハラと舞い上がる花弁を見つめていると、森の向こうから一頭の狼がゆったりとした足取りで花畑にやって来るのが見えた。
< 339 / 390 >

この作品をシェア

pagetop