森守の令嬢はもふもふ大型獣人に執愛される
 ヴィリカスがエマを見つけたのは、彼女が失踪した翌日のことだった。

 前日からやけに魔の森が騒がしくて、原因を探るために魔狼は一族総出で駆け回っていたという。

 そこへ、仲間のうちの一頭が、エマを見つけた。人間が森にいる、と。

 その当時、ディンビエ国内の魔の森に人間がいるのは、異常なことだった。

 魔の森から最も近いトルトルニアは、防護柵を作って魔の森(こちら)を拒絶していたからだ。

『まさか』

 見間違いだろうと行ってみれば、間違いではなかった。

 人間は確かに、そこに居た。

 大きな木に(もた)れるように、老婦人が座っていた。
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