森守の令嬢はもふもふ大型獣人に執愛される
 ヴィリカスもまた、老婦人を見て、彼女の名前を呼んだ。

『エマ』

「最期にどうしても、あなたに会いたくて。図々しいと思うわ。けれど、あなたにしか、頼めない」

『本当に。お前は、いつも自分勝手だな』

「ごめんなさいね、こんな女で。でもあなたも、悪いと思うわ。女の趣味が、悪過ぎる」

『それで、頼みと言うのは?』

「……私を、食べてちょうだい」

 エマの申し出に、ヴィリカスはムッとした。

 だって彼は、理性のある魔獣だから。理性のある魔獣は、人に恋することはあっても、食べることはない。決して。
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