森守の令嬢はもふもふ大型獣人に執愛される
 そこにあったのは、焼け溶けた金属のかたまり。

 原型が分からないくらい溶かされたそれは、もしかしなくともヴィリニュスの鍵だろうか。

 マルゴーリスは、「有り得ない」と呟いた。

「有り得ない? でも、残念。僕には可能なんだよ。ああ、良かった、先祖返りで。この力があったから、エディタは好きな人と生きていけるのだもの」

 ──ボッ。

 ミハウの指先から、炎が現れる。

 ユラユラと揺れながら大きくなった炎が、大きな口を開けてニタァと笑んだ。

「ねぇ、おじさん、知っている? ヴィリニュスは、魔狼の血筋なんだ。たまに僕みたいな、先祖返りが生まれるのだけれど……魔笛はね、そんな先祖返りが人を襲わないために、もしもの時の抑止力として作られたものなんだよ。でもさ、おじさんは魔笛を何のために使おうとした?」
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