森守の令嬢はもふもふ大型獣人に執愛される
 馬車は何かを避けるように、蛇行運転した。

 リディアを抱きしめたまま、エディは必死になって体勢を保つ。

 走っているのは、ディンビエの草原地帯だったはずだ。

 見渡す限りの草原で、大きな生き物といえば放牧された牛や馬くらいしか思いつかない。

(暴れ牛でも、いたのかな?)

 祭りでもないのに、牛が興奮しているなんて珍しい。

 そう思っているエディの耳に、ルーシスの舌打ちが聞こえた。

「クソッ!」

 苛立たしげなルーシスの声に、エディに抱きつくリディアの手に力が篭る。

 不安げな彼女の気持ちに引き摺られるように、エディの気持ちも神経質になっていった。
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