森守の令嬢はもふもふ大型獣人に執愛される
一章

 熊の襲撃は、とても恐ろしいものだった。

 けれど、あの悲しげな声が耳にこびりついて離れない。

 あれは、なんだったんだろう……?

 そう締め括られた話に、ジョージは深く頷いた。ようやく合点がいったというように。

 ジョージが座るソファの後ろで、話の途中で入室してきた人物が、お茶を持ってきたトレーを抱きしめてガクリと項垂れていた。

 柔らかなそうなハニーブラウンの短髪に、合間から見え隠れする丸い耳。愛嬌のある垂れ目は、春の花園で蜜蜂たちがせっせと集めた蜂蜜みたいな淡い黄色をしている。

 黒の軍服を着ているが、後ろに回ったら腰のあたりにフワフワの茶色い尻尾があるのかもしれない。

(これは……もしかしなくても、熊の獣人さんだろうか? ジョージ様と並んで遜色ないどころか超美形のルーシスさんと張り合えるレベルの顔面偏差値……獣人って、すごい)
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