棺桶に接吻


それなら、おばあちゃんの記憶があるわたしは、だれなんだろう。



わたしは、おばあちゃん?

おばあちゃんは、わたし?



「千草は、一体だれなの?」


「おれはおれだよ。椿も椿だ」



でも、お母さんも椿だし、おばあちゃんもおじいちゃんも椿だ。


千草だって、きっとそうなのに。



わたしが、おばあちゃんといっしょなら、おじいちゃんをたべたおばあちゃんといっしょってことで。



それなら、おじいちゃんとおばあちゃんはいっしょってことだ。


それなら、わたしは顔も知らないおじいちゃんでもあって。


でも、顔はやっぱり知ってるわけで。



だから、わたしはおばあちゃんでもおじいちゃんでもあって。


きっとこれから、お母さんにも、お父さんにもなる。

< 10 / 14 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop