[続]小さな恋物語

｢あたしの名前ですか? あたしは今日からN高校に転校する黒川 佑希(ｸﾛｶﾜ ﾕｳｷ)って言います｣


｢やっぱり佑希なんじゃねぇか。俺のこと覚えてない?｣


俺がテンション高く佑希に聞くと佑希はｷｮﾄﾝとした顔をして俺を見つめた。


｢えっ…と。白石 智流君でしたか? あなたとあたしは知り合いだったんですか?｣


佑希から出た言葉はそんな残酷な言葉だった。


えっ? 佑希はマジで言ってるのか??


｢何言ってんだよ! 俺だよ? 智流だよ? 何冗談言ってんの?｣


佑希の言葉が信じられなくて彼女の肩に手を置いて彼女を揺らしていた。


｢やっやめて下さい!｣


彼女に澄んだ声が聞こえて俺は動きを止めた。


｢ごめんなさい。本当にあなたのことを覚えてないんです。
その…1ヶ月くらい前に事故にあってここに住んでた記憶がほとんどないんです｣


記憶が…ない? 何、漫画でありがちなこと言ってんの?


訳がわからずに呆然と佑希を見てると、


｢あのぅ…あたし急いでるから行きますね。
あたしのことを知ってるみたいなので学校のこととかｺｺのこといろいろ教えてくれますか?


その…あなたのことを知らなくてごめんなさい｣



そう言って俺の前から去っていった。


｢ｸｿ! 記憶をなくしたってなんだよ…｣


俺は近くにあった壁を殴っていた。



4年ぶりに会ったというのに彼女は俺のことを綺麗さっぱり忘れていた。


そのことに俺は無性に腹がたった。