[続]小さな恋物語
俺の体から血が流れている。


ドクドク



ってそう脈打ちしながら血は流れてた。


その血が暖かくて俺は眠くなっていた。


その時――


「智流!」


そう俺の名前を呼びながら俺の体を揺さぶる者がいた。



「なん、だよ。人が眠…そうにしてる、のに揺さぶる…のは」


途切れ途切れ言葉を出しながら俺を揺さぶる者を見ると


佑希だった。


佑希が泣きそうな顔をしながら俺を見つめる。


「智流。智流。智流」


佑希は俺の名前を連発している。


「な、に?」


朦朧としてくる意識の中で俺は返事をした。


「あたし、思い出したよ」


佑希が俺を思いだしたのか? でもその前に体は大丈夫なのか?


「車に、ぶつ…からなかった? どこも、ケガしなかった?」


「うん。大丈夫だから」


佑希は泣きながら返事した。


そっか。それならいいや。


俺は血に染まる手で佑希の目から流れる涙を拭いとるととそのまま意識を失った。





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