誰がなんと言おうと砂
 

「体調不良すか」


 耳通りの良い声だった。

 蹲った顔を少しだけ持ち上げたら、そこにいたのは猫目、ほくろの、星田くん。星田祐介くんで、彼はわたしを見たあと、また階段を上がってきた他の男子に一度視線を外す。


「あれ、祐介どした。そのひとだれ」

「体調悪いみたい。連れてく」

「ヤダ♡ イケメン! 抱いて」

「死ね」


 だれー? って星田くんの友だち? 同級生と思しき1年生達が階段を上がりしなわたしを覗き込むのに、それから庇うように星田くんが遮った。
 そして人気がなくなったのを見計らって、彼はまたわたしを見下ろす。

 で、ふいに隣にしゃがみ込んだ。


「乗ってください」

「え」

「おぶさってください。運びます」

「無理、重いんだよとても、潰れてしまう」

「男なんで一応」


 どうぞ、とそのまだ発展途上の背中を見て、肩に手をかけ、やむなくおぶさる。そうすると星田くんが立ち上がったけど、歩き出し二歩目でがく、と膝を折った。


「たしかに重い」

「降ろそう!!」

「冗談す」


 へいき、と星田くんが笑ったその場所から保健室までは実はとても距離があったけど、彼は運ぶとわたしに言った通りきちんと約束を守って、そして保健室に辿り着き、わたしを目的地に降ろしてくれた。

 昼休み。「不在中」の吊り下げ札があった通り、保健室には先生がおらず。

 ひとまずソファに座ったわたしは、膝を抱えて蹲った。


「どっか痛いんです?」

「ううん」

「ベッドに下ろしたほうがよかったですか」

「ううん」

「…」

「…」



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