木村さんと蛇
私は真ん中あたりの席だけど、木村さんと離せない距離ではない。桜の下で彼女を見つけた高揚感がジワジワと戻ってきて席を立ち話かけようとしたが、
『よーし、1Bみんな揃ってっか?第一回目の
ホームルーム始めるぞ』
ガラガラと今度は前方の扉が開き、スーツ姿なのにいかにも体育会系の男性教師がやってきた。
先生の登場にみんながガヤガヤしながらも席に着いていく。
私も腰を下ろし、席についた。それでも、横目で木村さんを見つめてしまう。
長い艶やかな髪は相変わらず窓から入る日光で天使の輪がキラキラ反射している。
背中に物差しでも入っているのか、先生のしょうもないギャグを綺麗な姿勢で聴いている(大多数の生徒は笑っているけど、私や木村さんは笑ってない)
ふっくらとした桜色の唇。どこのメーカーのリップなのかな?後で聞いてみよ。
それに、ピンと姿勢を張っているせいか胸の膨らみに何故か目がいってしまう…って私は女だよ!何、人の胸をジロジロ見てるんだろう!ペチペチと自分の頬を叩きながら平常心を取り戻そうとしていると、
『よし、じゃあ先ずは自己紹介からな!お前ら、この自己紹介でちゃんとクラスメイトの名前しっかり覚えろよ』
入学式や新学期恒例の自己紹介が始まり、私は小さなメモをカバンから取り出した。
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