溺愛砂漠 ~デザートローズ~
陽が昇り美樹を連れ立ってコテージの玄関を出る。ガレージに向かおうとしたその時だった。黒いスポーツタイプの外車が一台、アプローチ前に乱暴に横付けされた。

「テメーが水上廉か」

運転席から出てきた同い年くらいの若い男が、ずかずかと僕達の前に立ちはだかると不躾に言い放つ。

「よっぽど死にてぇらしいな、このクソが」

「な・・・んで、眞樹(まき)・・・?」

「オフクロから電話来たんだよ。美樹に電話したら男が出て、『ひと晩預かる』とか抜かしやがったってな。大事(おおごと)にするなっつーから俺が来てやったんだろーが。お前も色ボケてんじゃねーよバカ女」

黒のパーカーにスエットの出で立ちで凄む、ヤンキー風情のこの男が美樹の一つ違いの弟。見た目よりは切れ者だと聞いた。

「いいから帰んぞ。二度と会わせねーからな」

「ッ・・・っ、やだっ痛いってば、離してよっ」

美樹の腕を掴み、有無を言わせず乗ってきた車に引き摺って行こうとする。
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