溺愛砂漠 ~デザートローズ~
あのね。今夜は少しだけ特別。憶えてる?一年前の今日、ミキと出会ったんだよ。

駅に向かう途中、目の前でヒールを引っかけて派手に転んだ君に釘付けだった。・・・なんだろうね、あんまり綺麗にバタリと倒れ込んだから僕のほうが驚いたんだ。漫画みたいだなって。

掌と膝を擦りむいて痛そうで。大丈夫ですって笑いながら堪えてる顔に一目惚れ。タクシーで送ってあげるって言ったら、ものすごい不審な目で警戒されたっけ。下心しかなかったから言い訳できないな。

お礼を言われて、自分で歩き出したミキの後ろ姿を見送った時はもう会えないと思ったのに。運命の再会は案外早かったね。同じ駅前で偶然すれ違って、お互いに『あれ?』って顔で。僕から誘って、朝まで君を食べ尽くした。

あの頃も今も、僕は君が好きで好きで好きで。どれだけ君を貪っても足りない。ぜんぜん足りない。いつも乾いてしょうがない。ミキが欲しくてたまらない。

ねぇミキ。ミキも同じくらい乾いて、僕に飢えてくれるかな。世界を殺しても僕が欲しいって言わないかな。

ねぇミキ。僕は殺せるよ。君を手に入れられるなら。
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