はじめてのカレカノ
うちの両親は駅から一本裏路地に入ったところで小料理屋を営んでいる。
毎日夕方には仕込みのためお店に行ってしまうので、うちの夕飯は私が作ることが日課になっていて。
一つ下で中三の弟、陽人が部活から帰ってくるまでに夕飯を作り終えていないと、
『腹減ったー』
って大騒ぎするからあわただしい。
陽人はバレーボールで高校の推薦が決まっているから卒業間近の今でも部活に参加している。
私と同じ高校に入学するんだけど。
今夜は何を作ろうかな?って献立を考えながらスーパーに入る。
と、メールが鳴った。陽人からだった。
≪今夜、ごはん要らない。部活の後輩たちと食べてから帰る≫
そうですか。それなら私一人分の夕飯を作るのも面倒だし、私も駅ビルで適当に済ませちゃおう。
≪あまり遅くならないようにね≫
陽人に短い返事をしてから駅ビルに向かった。
この駅はショッピングモールが隣接されているから、今夜はフードコートで軽く食べて帰ろう。
喫茶店とかファミレスは一人では入るのに勇気がいるけど、フードコートなら誰の目も気にならないから一人でも平気。