はじめてのカレカノ
公園のベンチに腰を下ろして2人で街灯を眺める。
夏の虫が光に向かってグルグルと飛んでいた。
「あの、高槻先輩?」
「あのさ、結月。その“高槻先輩”ってそろそろやめてくれないかな。結月との距離を感じるんだよ、それ」
「じゃ、じゃあなんて呼べば?」
「ん。“翔”でいいよ。うん、“翔”がいい。ね。言ってみて」
名前を呼ぶ前から顔が熱くなって、緊張した。
「い、今ですか?ここで呼ぶの?」
「あとさ、敬語も嫌だ。結月への今日のノルマな。“翔”って呼ぶことと敬語は使わないこと」
「ハードル高いです。むしろ棒高跳びです」
「だめ、ちゃんと呼んで」
「鬼だ」
「ははっ。結月ほど鬼じゃないし。俺だって最初に結月って呼んだときさ、すっげー緊張してたんだよ。知らないだろう?結月だって俺に対して鬼だったんだからな」
「んぐぅ」
「ふははっ!なにそのぐうの音!結月おもしろい」
「だって、しょ、翔が私を鬼だって言うからさ・・・」
「ん?聞こえなかった。何?もう一回言って」
「しょ、翔が鬼だって・・・・」
「もう一回、言って」
「だからぁ、翔が・・・」
「もう、結月可愛い。俺大好き」
そう言って翔がぎゅーって抱きしめてきて。
「私の方が大好きだよ」 翔の胸の中で囁いた。