はじめてのカレカノ

公園のベンチに腰を下ろして2人で街灯を眺める。

夏の虫が光に向かってグルグルと飛んでいた。

「あの、高槻先輩?」

「あのさ、結月。その“高槻先輩”ってそろそろやめてくれないかな。結月との距離を感じるんだよ、それ」

「じゃ、じゃあなんて呼べば?」

「ん。“翔”でいいよ。うん、“翔”がいい。ね。言ってみて」

名前を呼ぶ前から顔が熱くなって、緊張した。

「い、今ですか?ここで呼ぶの?」

「あとさ、敬語も嫌だ。結月への今日のノルマな。“翔”って呼ぶことと敬語は使わないこと」

「ハードル高いです。むしろ棒高跳びです」

「だめ、ちゃんと呼んで」

「鬼だ」

「ははっ。結月ほど鬼じゃないし。俺だって最初に結月って呼んだときさ、すっげー緊張してたんだよ。知らないだろう?結月だって俺に対して鬼だったんだからな」

「んぐぅ」

「ふははっ!なにそのぐうの音!結月おもしろい」

「だって、しょ、翔が私を鬼だって言うからさ・・・」

「ん?聞こえなかった。何?もう一回言って」

「しょ、翔が鬼だって・・・・」

「もう一回、言って」

「だからぁ、翔が・・・」

「もう、結月可愛い。俺大好き」

そう言って翔がぎゅーって抱きしめてきて。

「私の方が大好きだよ」 翔の胸の中で囁いた。
< 159 / 312 >

この作品をシェア

pagetop