平凡な私の獣騎士団もふもふライフ3
序章 あの日、別邸にて
美しい白亜の屋敷があった。
それは王都に建つ、グレイソン伯爵家別邸だ。内外共に美しく、そしてどこか領地の自然を思わせる長閑な空気も漂っていた。
――それは、少し前のことだ。
カルロは、そこを訪れた時に一抹の心配は完全に消えてしまった。
白獣のことを、よく考えられて作られた建物であるのを感じた。人の暮らしは最近からしか知らないが、それでも、そんなことが伝わってきた。
良かった、という思いがまずは過ぎっていった。
そこに、引退した老いた戦闘獣がいると、聞いていたから。
先代獣騎士団長の相棒獣。リビングでゆったりくつろぐ彼女のため、広々とした場は家具の数や配置まで考慮されていた。
《ふふふ、そんなに足腰は悪くないのですけれど》
リビングで、リズとジェドが両親と話している。
そんな中、カルロは開かれた大きな窓の手前で、その先代相棒獣と隣同士に並んでくつろいでいた。
《ヴィクトルもアリスティアも、サムソンも家の者たちも、わたくしをとても気遣うのですわ。まだ、高く飛ぶことだってできるのに》
女王によって繋がりを作られた、同種族同士の保有魔力での意思疎通。
――その白獣同士の言葉は、人には聞こえない。
相棒獣もカルロも、リビングのリズ達の様子を眺めていた。時々こちらへ向けられるリズ達の目には、喧嘩しないらしいと安心感があった。
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