平凡な私の獣騎士団もふもふライフ3
「ひぇっ、な、なんでもありません!」

リズは慌てて答えた。ちょっと恥ずかしくなって、咄嗟に突っぱねるもののジェドの腕から逃げられない。

コーマックが、ちらりと苦笑を浮かべる。

「団長、心が狭いですよ」

「ちょっとした息抜きだ、見逃せ」

「私は全然心が休まらないんですけど!?」

しれっとジェドが視線も返さず答えた途端、リズは隣から悲鳴を上げた。

先頭を歩く役所員の男が、気になった様子でちらりと盗み見る。そんな騒がしさの中、コーマックは続けた。

「カルロとエリーなら、僕らが乗った馬車に付いてきますから、心配はいらないですよ」

役所を出たのち、前に用意されていた馬車に乗り込んだ。

向かい側にジェドとコーマック、リズは座席を一人で使った。座った途端、疲労感が込み上げて身体がくたっとする。

部屋を出る前、何か大切なことを掴みかけたような気がした。

けれど、よく思い出せない。シモンのこと、白獣だと判明した亡霊のこと、これからの獣騎士団のこと……考えは途端にいっぱいになる。

思えば早朝から、怒涛のように色々と続いた。

疲労を自覚した時、馬車が走り出した。

ガタゴトとリズムを刻む揺れに、つい瞼が重くなった。ふとジェドが言っていた言葉が脳裏を過ぎる。

『ちょっとした息抜きだ』

それなら、今がそうなのかもしれない……。

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