平凡な私の獣騎士団もふもふライフ3
はぐれてしまうのは心配だったし、かといって恋人みたいに腕を取ってはくれないだろう。

だから、せめてと思って手を繋いだ。

そうしたら、彼女は手を繋いだままでいて欲しがったのだ。

とても信頼されているのを感じていた。でも、まさか恋人繋ぎを彼女自身から引き続き所望されるなんて思ってもいなかった。

思わず余裕の台詞なんて出こないほど、ジェドはうれしかった。

まだ恋も知らないリズが、真っ赤になって慌てる姿につい目を奪われた。

可愛すぎるだろ、とジェドは思って顔が熱くなった。抱き締めたくなってしまったが、ぐっとこらえた。

『俺は――フリではなく、本物の関係にしたいよ』

この前の夜、愛おしさが勝って思いを止められなかった。

心を許し始めていてくれているリズを前にしたら、愛おしい気持ちが溢れ、つい今の関係を本物にしたいと口走ってしまった。

初心なリズに、まだ心構えも整っていないと知っていたのに……。

一人の男として意識してくれたのはうれしい。でも、意識しすぎて言葉も交わせないのは、寂しくて。

だからあの夜、彼女の答えから逃げるようにジェドは意識をそらさせた。

こんなにも自分が慎重になっているだなんて、これまでのジェドからは考えられないことだった。

いつもずっと、ジェドはリズのことばかり考えている。

「ったく、呑気なもんだな」

――好きだ。君が、好きだ。

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