平凡な私の獣騎士団もふもふライフ3
そこで互いに顔を見合わせた。途端に真面目な表情も崩れて「くくっ」「ふふ」と、それぞれ素の表情で笑いをこぼした。

二人でいる時は、幼馴染。一番気が楽な相手同士だった。

通り雨が、ひどさを増した。先程よりも粒を大きくして、車窓を容赦なく激しく叩き始めた。

まるで、自分たちの存在を隠してくれているみたいだ。

世界が一時目を瞑ってくれている状態であるというのなら、今、彼女とキスを交わしてしまってはいけないだろうか?

雨水のカーテンが引かれた車窓から、ジェドはリズへ目を移してそんなことを思った。ただの夢だよと言いくるめて、彼女と深く口付け合う。

それくらいに、ジェドは限界に近かった。

両親からの手紙で、結婚の話などが書かれてあった。それを読んで、想像せずにいられようか。

彼女と婚約して、共に結婚の準備を進め――王都で式を挙げて夫婦になる。

それを強く望まされて、余裕がなくて。

だから先日の夜、思わず本音の言葉の一つがこぼれてしまったのだ。

「ずっと、こうしていられればいいのにな」

雨音で、きっとコーマックには聞こえていない。ジェドはリズを見下ろして、ぽつりと言葉をもらした。

ここにいるのは、信頼している幼馴染だけ。

少しだけ目を瞑ってもらって、彼女とキスしていまおうか?

ジェドは撫でる手を、リズの頬へと滑らせた。寝顔に引き寄せられて、顔をゆっくりと近付ける。

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