平凡な私の獣騎士団もふもふライフ3
「その可能性はあると思う。白獣は血で理解しているというより、俺は理性で分かっていると思っている」

「ほぉ。つまり大人の白獣から、子の白獣へ歴史が伝えられていると?」

「そうでなければ、説明がつかないことも多い」

ジェドは、同意見であるのを認めるようで少々癪そうだ。

しかし、それに対してベルベネット子爵は満足げだった。うんうんと頷くと、うっとりと息をもらしてティーカップを手に取る。

「グレイソン伯爵から、直にお話を聞けて光栄ですよ。なんとも素晴らしい」

と、紅茶を少し味わった彼の目が、隙のない輝きを宿して笑む。

「気になるのは、『アティーシャ』という名ですね」

ふむと彼は顎を指先でんぞる。

「それを亡霊が少年に伝えている、というお話でしたが。はて、かなり古い響きの地方名のように思えます」

「俺も気になったが、記憶を思い返しても覚えがない」

ジェドが、ゆっくりと首を左右に振る。

「そうですか……。副団長様はどうですか? 幼馴染でもあるとのことですので、前獣騎士団長や、過去に伯爵邸の出入りもあったかと推測しますが」

「いえ、僕も色々と話も聞いてきましたが、全く」

「ふうむ。それはまた、不思議で面白いですね」

面白い、という感想とは裏腹に、ベルベネット子爵が初めて考える顔で、組んだ足の上で指をトントンと叩く。

< 131 / 192 >

この作品をシェア

pagetop