平凡な私の獣騎士団もふもふライフ3
拒絶もないリズの手に、ぐいっと鼻先を押し当てた途端に亡霊が泣き出した。

もう完全に戦意を失っているようだった。とても大きな獣なのに、リズはとても胸が締め付けられて彼をそっと撫でた。

その時、ごぉっと別方向から強い風の音が聞こえた。

つられて目を向けると、カルロに乗ったジェドがそばを通過していく。

「カルロ、リズたちを落とすなよ」

《ふん。分かってる》

リズに聞こえるよう、わざわざ声を発したのだろうか。ちらりと目を向けてきたカルロが、小さく安堵の溜息を吐くのが見えた。

落下する亡霊の身体の下へ、カルロが回った。コーマックやトナーたちも相棒獣と飛行してきて、その支えに加わった。

落ちる速度がゆるやかになった。

獣騎士団は、亡霊を降ろすべく真下にある山を目指す。

「リズさん、あまり無理はしないでくださいね。本気で心臓が止まりかけました」

コーマックが、大きな吐息を交ぜてそう言ってきた。他の獣騎士たちも「全くだ」と温かくぼやいてくる。

リズは、今度は込み上げる温かい気持ちに涙腺が緩んだ。

「ごめんなさい。それから、ありがとうございます」

小さな声しか出なかったのに、ジェドが「ふん」と答えてきた。

「意外なところで行動力を発揮するのには、もうだいたい分かってる」

そう口にした彼が、言いづらそうに頭をかいた。

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