平凡な私の獣騎士団もふもふライフ3
コーマックが、せっつくように「団長」と声を投げた。トナーたちも、温かい目でニヤニヤと見守っている。

「ほら。団長が言わないと、俺らが締まらないっすよ」

「代表して言ってくれなくちゃ」

「分かってる。リズ、その、……俺たちを信頼してくれて、ありがとう」

きっと助けてくれると。だからこそリズは、無謀にもカルロから飛び出すことができた。

彼女は、少し考えてふるふると首を横に振った。

「いえ。その勇気をくれたのは、団長様とみなさんです」

臆病で平凡な自分を変えてくれたのは、獣騎士団での生活だった。

リズにとって今は、かけがえのない大切な存在だ。

自然と微笑んだリズを見て、ジェドが照れ隠しの顰め面をそむけた。コーマックが、珍しい様子を見たと密かに笑った。

獣騎士たちも、はにかんで照れた。

「そっか」

「そんな風に言われたらなぁ」

そう言葉が飛び交う中、獣騎士団は山へと着地体勢に入った。



◆§◆§◆



山の森の中は、静まり返っていた。

木々の葉も、ささやかながら音をたてるばかりだ。遠くから、鳥のさえずりが聞こえてくる。

「さっきは、あんなに風も吹いたのに」

リズは、ふと不思議に思ってきょろきょろする。シモンを上空から発見した時と違う気がした。

《それは、あなたが望んだからだろう》

「え?」

振り返ると、腰を下ろしている亡霊と目が合った。

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