平凡な私の獣騎士団もふもふライフ3
山に降りてから、まずは速やかにシモンの無事が確認された。コーマックが携帯用の気付け薬などを飲ませて処置している。

気付いたジェドたちが目を向けた時、亡霊が首をゆるやかに振った。

《いや。自然というのは、時には人の味方をするものだ》

本来の言葉を呑み込んだような気がした。けれど、聞き慣れないカルロの〝声〟にジェドたちの気がそれる。

《子供が、起きたぞ》

教えたカルロが、尻尾を一回大きく振る。

リズはハッとして足を向けた。するとジェドが真っ先に向かい、そばに膝をついているコーマックを押しのけて覗き込む。

「おい、起きたか」

「うおぅ!? 凶悪なイケメン顔が間近にっ――いて!」

「誰が凶悪だ」

容赦なくジェドの拳骨が落ちた。

いい人の演技をしていない時の彼は、鬼上司だ。加減はしているようだが、さすがに可哀そうになる。

「団長様、シモン君は起きたばっかりですよ……」

「こういうのは甘やかすとだめなんだ。ひとまず、甘いものでも食ってろ」

……ん?

がさごそと、ジェドが軍服のポケットから菓子の包みを取り出した。コーマックが柔らかな苦笑を浮かべる中、リズは戸惑った。

「あの、どうしてお菓子がポケットに……?」

「騎獣で消耗した分を、少しは補える」

だからって、それを出立前に用意してたの?

意外と面倒見はいいのかしら。

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