平凡な私の獣騎士団もふもふライフ3
そうリズが首を捻っていると、掌にお菓子の包みを数個置かれたシモンが、拳骨も忘れた様子で歓声を上げた。

「わぁっ、何これめっちゃいい匂いする!」

「ベルベネット子爵の別邸にあったものだ。味は保証する。だが、食いたくないなら食わないでもいいぞ。今すぐ食べないなら返せ」

「えっ、やだよもったいない! そんな上等な菓子食べたことねぇもん!」

発破をかけられたシモンが、遠慮もなくなって菓子の包みを解きにかかった。

少しすれば歩けるくらいまで回復するという。そんなジェドの話に、やっぱり素直じゃないと思いつつ、リズたちは亡霊へと目を戻した。

相棒獣たちが距離を置いて囲む中、大型級の白獣である亡霊は、項垂れるようにして静かに座っていた。

もはや、戦う気力もなくなってしまっていた。

「なぜ、こんなことをした?」

《……そんなこと、もう話しただろう》

獣騎士がどうなろうと知ったことではない。そう怨むほどの思いで、シモンを無理やり騎獣させた。

ジェドが黙り込んだ。

すると言葉を待つ彼に、亡霊が目を眇める。

《伯爵。我らが故郷の地の領主よ。どうしてあなたは、あのお方を助けてはくださらなかったのだ》

深い嘆きにくしゃりと表情が歪む。

――その思いが悔いとなり、憎しみとなって彼を亡霊として蘇らせた。

< 177 / 192 >

この作品をシェア

pagetop