平凡な私の獣騎士団もふもふライフ3
「お、お前、昔っから涙腺弱いじゃん。その、な、泣くなよ? 泣かれたら俺が悪者みたいになるだろ――いてっ」

「悪口言うディックが悪いわよ!」

「リズ姉にばっかり意地悪してっ」

「姉さんたちの代わりに成敗してあげるんだから!」

向こうのテーブルにいた年下の女の子たちが、ディックにキチンの骨やらを投げ始めた。品がないぞと大人たちが慌てて止めに入る。

リズの両親が、楽しげに笑った。

「私は、どっちに嫁いでも文句無しだけどねぇ」

「そうだな。あのリズがいい家に嫁いでくれたら、安心だ」

「確かに!」

父の言葉を聞いた途端、村人たちがドッと笑顔に沸いた。

それを耳にして、リズは恥ずかしさが増した。団長で、領主だ。自分なんかが嫁入りできるはずないじゃないのと思いながら着席する。

「リズ、少しいいか?」

ふと、ジェドにこっそり声をかけられた。

「はい、なんですか?」

「さっき話していた彼は? リズにとってなんだ?」

視線を返した途端、目を覗き込まれてドキドキした。

なぜか、ジェドの眼差しは真剣だった。心の奥ので身梳かされるような強い目に鼓動が速まる。

さっきまで作り笑顔だったのに、どうしたんだろう?

「えっと、近所に住んでいる幼馴染の、ディックです」

「幼馴染? 本当にそれだけ?」

「え。あ、はい。そうですけど……」

「ふうん」

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