平凡な私の獣騎士団もふもふライフ3
思案顔のジェドが、視線を離していってホッとする。

その時だった。彼が、ふっとディックへ顔を向けたのが見えて、リズは「え?」と声がもれた。ジェドの口端は引き上がっている。

一体何をするつもりだろうと思った時、彼がこう言い放った。

「ディック君、だっけ? 君は子供だのなんだのと言っていたが、リズはもう十七歳で、とても魅力的な女性だと思うがね」

「げほっ、ごほ!」

またディックが咳き込んだ。

さらりと口にしたジェドは、大人の笑みを浮かべていた。悠々と見つめられた彼の頬が、じわじわと赤らむ。

「み、魅力的って!」

「褒めただけだぞ、どうしてお前が恥ずかしがっているんだ」

言葉を詰まらせたディックを前に、くすりとジェドが余裕たっぷりに笑う。口元に指をあてたさりげない仕草も美しい。

コーマックが、額に手をあてて項垂れていた。

リズは『魅力的』発言に、ゆっくり体温が上がっていく。

「リズの髪も、日差しに透けて美しい春色だ。果実みたいに瑞々しい目も、純心さを映し出しているみたいじゃないか」

まるで睦言みたいに甘い台詞だった。

続けてそう説かれたディックが、もう耳まで真っ赤になって俯く。

貴族だから、異性への社交辞令なんてお手のものなのだろう。前回の任務で、散々聞かされてきたから分かっている。でも……。

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