平凡な私の獣騎士団もふもふライフ3
嘆く獣の遠吠えが、浮上していく意識の中で遠ざかっていく。
不思議な夢を見たように思ったのだが――それは唐突に、一つの声で現実に引き戻された。
「リズ起きろ! 緊急事態だ!」
「ふぁい!?」
突然、そんなことが聞こえてびっくりする。
急いで身を起こすと、ベッドの隣はもぬけの殻だった。ジェドがすぐそこで薄地のジャケットに袖を通している。
目が合った拍子に、ジェドが少し笑った。
「ったく、少し騒がしくなっても全く起きなかったな。安心しきっていたのは分かるが、警戒心がなさすぎるのもどうなんだろうな」
上司として叱っているのだろう。でもその眼差しは叱る風ではなく、どこか優しげでもあった。
寝る前のことが、ふと蘇ってドキドキしてくる。
身を包んでいる庶民服が、まるで彼との世界の距離感を近付けたみたいだ。改めて目に留めたリズは、胸が高鳴ってきた。
「すぐ動けそうか?」
どこか気遣うようにそう言われた。
リズは、ジェドの目に仕事の真剣さが宿っていることに遅れて気付く。普段の強引さがないことで、いよいよ気まで引き締まる。
「も、もしかして何かあったんですか?」
慌ててベッドから降りる。
窓の向こうは、夜が明けたばかりだ。予定していた起床時間より全然早くて、嫌な予感がした。
「さっき、ベルベネット子爵の執事が急ぎ伝えに来た。例の亡霊が出たらしい」