平凡な私の獣騎士団もふもふライフ3
どうしてかリズの手は、引き留めるみたいに強くジェドの手を握ったまま離れないでいた。

「あの、私、もう手を離すんだろうなと分かっているんです。だから、は、離さなくちゃと思って、あの」

頭の中が沸騰しそうになった。もう自分で、何が言いたかったのかも分からなくなってくる。

コーマックが目を瞬いた。

同じく察したジェドが、少し頬を赤く染めた。

「リズは、俺に手を握っていてもらいたいのか?」

そう言われて、リズはぼふっと真っ赤になった。

指摘されて気付く。人混みだからはぐれないように誰かに引いてもらいたいわけじゃなくて、リズはジェドに掴んでいて欲しいのだ。

でも、どうしてそう思ってしまうんだろう? 彼だけがいい、だなんて……。

昨夜の言葉のせいで、彼を意識しずきてしまっているのだろうか。

思考がいっぱいいっぱいになっていると、ジェドが驚かせないようゆっくりと目線を合わせてきた。

「その、不安なら、このまま手を繋いで行こうか?」

顔を覗き込まれて優しく言われた。

こんなところで大人の気遣いを出すなんて、ずるい。リズが答えられやすくするために、彼はわざわざそんな訊き方をしてきたのだ。

そう分かっても、答えなんてとっくに決まっていて、

「……その……えっと、お願いします」

リズは、恥じらい消え入る声で本心を伝えた。

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