平凡な私の獣騎士団もふもふライフ3
掌の中がしっとり汗ばんでいるのに、ジェドはしっかりと指を絡めて握り、リズの手を引いた。

「全く。なんだかんだで、いい感じじゃないですか」

コーマックが小さく笑って、吐息交じりに安心した呟きもらして続く。

恋人繋ぎで寄り添い歩くリズとジェドの姿は、まるで初々しい本物のカップルみたいに町に溶け込んでいる。

二人、進んでいく歩みがとても心地いい。

とくとくと胸の鼓動が高鳴って、ふわふわとしてくる。

リズは、自分の手を引いてくれるジェドを見ていた。コーマックに見られている恥ずかしさもなかった。

ただ一心に、ジェドの手の温もりだけを感じていた。

「――そんなに見られると、恥ずかしいんだけどな」

ぼそっとジェドが口にした。けれど悪くなさそうに、にやけてしまいそうになる口元を、赤くなった頬ごと腕で擦った。

しばらく進んでいると、役所が近付いてきた。

一階の正面扉は開かれていて、きちんと警備の人も立っていた。

ジェドが足を止めて、リズを振り返る。大きな両手で手を包み込まれて、そこでようやく彼女は我に返った。

「リズ、カルロとエリーが近くから見ているはずだ」

エリー、とはコーマックの相棒獣の名前だ。

普段、獣騎士は心の中で相棒獣に付けた名前を呼ぶ……そう思い出しながら、リズはジェドに頷きで応える。

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