光を掴んだその先に。
なんであんな男を好きになってしまったんだろう。
ただみんなに優しいだけじゃん。
ただ人が良いだけで。
ああいうの、確か八方美人って言うんだよね。
いざとなったら手の平ひっくり返す、ズルいやつ。
「初恋なんてそんなもんじゃない?」
「そうそう。それに天馬って、思ってること言うタイプだからあたしはずっと嫌い」
慰めなんかではなく、至って興味のなさそうな返事をしてくれる2人。
小学生からの同級生である宮島 明莉(みやじま あかり)と田辺 優花(たなべ ゆうか)。
「…初恋、じゃないんだよねぇ」
「え?そうなの?絃のそういう話きいたことないんだけど」
「うん。最近になって思い出したんだけどさ…」
毎日自分で作ったお弁当を広げて、しかし得意気に鼻を高くさせないほうが明莉。
購買で買ったパンを片手に前髪を弄っているほうが優花。
そして屋上から町全体に不満を吐き出したのが私だった。
「むかーし、本当に昔、…近所の男の子なのかなぁ?
ずっと一緒にいた子がいて…たぶんその子が初恋」