光を掴んだその先に。




「あ、こんなところにいたっ」



けれど唯一そうはならない子がひとり。

それはきっと、こいつだろう。



「那岐、もうお腹いっぱい?まだお寿司とか結構のこってるよ」


「かなり食ったからな、アイスケーキ」


「…それは…ごめんっていうか、ありがとうっていうか…」



俺の隣に立つ絃は何かを隠すようにモジモジと視線を泳がせる。

隠すというか、伝えようとしているのか。



「…ごめん那岐。ケーキも溶かしちゃったし、プレゼントとかとくに何も準備できなくて…」


「別にお前に何事も無ければそれでいい」


「う、…それも、ごめん」



どうにも自分のせいで俺を謝らせたとでも思っているらしい。

あれは確実に俺のミスでもある。

本当なら横浜の件は昨日片づける予定が、今日まで長引いてしまったのだから。


お前がここにいて笑ってる、それだけで俺にとっては何よりのプレゼントなんだよ。

…とは、言えそうにないが。



「あのね、私が施設にいた頃から…よく佳祐にやってたことがあって……」



ピク、と。

その名前が出るとどうにも面白くない俺は眉が寄ってしまう。



「それ…プレゼントになるかどうか分からないんだけど……やってもいい…?───って、怒ってる?え、怒ってる…!?」


「別に怒ってねえよ」


「うっそ!だってすごい剣幕してる…!!」



< 119 / 349 >

この作品をシェア

pagetop