光を掴んだその先に。
『…やめろ……来るな……、』
情けなく『来ないでください』と願うことしかできなかった。
痛い…頭が割れそうだ。
泣きつづける絃の声が脳裏に響いて仕方がない。
『なぎっ…、なぎ…!ぅわぁぁぁぁん…っ』
なにもできない。
俺じゃ守れない。
それは力が無く、戦う術を知らないからだ。
無力、無力、無力無力、───…無力。
『天鬼 剣も落ちぶれたモンだな。大罪人の息子を引き取ってんのかよ』
『ならこいつらはやっぱり義理の兄妹ってことか』
『可愛い可愛い娘に重い荷物を背負わせたんだな』
急にそんな哀れんだ同情心を振り撒くような会話が行われ、少年がこの状況を何とか把握できたのも束の間。
男はニタァと、悪魔のような笑みを落とした。
『…やめ…ろ、』
ガクガクと途端に震え出す身体。
冷や汗、悪寒、込み上げる嘔吐感。
『だったらその娘にも大罪人の息子の妹っつう証をやらねェとなァ?』
俺が『絃』と名付けた本当の理由。
それは俺と同じ字が使われているとか、そんなんじゃないんだよ。
血が繋がっていなくても。
俺とは違って神様みたいに綺麗な存在だとしても。
俺が君と、誰にも切れない絃─いと─で繋がっていたかったからだ。
『やめてください…っ、お願いします、やめてください……』
ここで少年は言葉だけでは守れないことを知った。
無力の上に綺麗事が並べられていることを知った。
『ははははっ!───男なら女の前で頭を下げてんじゃねェ…!!』