光を掴んだその先に。




極道、任侠、仁義。

難しい言葉はやはり難しいままだが、それは男が男に対する男としての叱責のようなものにも取れた。



『ちょっと赤ん坊には熱くて痛ぇかもなァ、まぁ根性試しっつーことで』



取り出されたライター。

石の尖端が火に炙られてゆく。



『やめろ……っ、やめろ、やめろ……!!』



生まれた場所が、たまたまそこだっただけ。

もし自分が普通の家族の元にサラリーマンの父と、専業主婦の母の子に生まれていたならば。


きっとこんなことにはなっていなかったのに。



『…ごめん……絃……っ』



あぁ、なんて。
なんて俺は弱いのだろう。

形ばかりだ。
形ばかりなんだよ、俺もあんたらも。


その刺青も煙草の匂いも───ぜんぶ形じゃないか。



『ぎゃぁぁぁあああああぁぁ!!!!』



少女のそんな悲鳴染みた泣き声は初めてだった。


こんな醜い“絃”で繋がりたかったわけじゃない。

こんなにも汚いもので繋がらせたかったわけじゃない。



『絃っ、いと、…いと、…絃…っ、』



額の同じ場所から血を流して気を失う光へ手を伸ばしても、触れられなかった。

さっきまでちゃんと掴んでいたというのに。


触れているようで、触れられない。


パァン…ッ!パンッッ!

パン───ッッ!!!



『ぐっ…!!』


『がはぁっ…!!』



響く銃声、広がる火薬の匂い。

そして次々に倒れゆく男たち。



『お頭…!!俺はあいつを…!』


『追うんじゃねえッ!!!…放っておけ』



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