光を掴んだその先に。




那岐の足元に座り込んでいる1人の男。

どうやら怪我をしたのは那岐ではなくて、同行していたこの人らしく。


龍牙組と思われる数人を追いかけた先のこの場所で、ナイフで切りつけられたと。

そして停めた車から離れていたために俊吾に迎えを頼んだらしい。



「とりあえず止血はしてある。つうか、なんでお前まで来てんだよ」


「え、だって俊吾が那岐が出血多量で死ぬって…」


「単なる早とちりだな」



こういうことはしょっちゅうらしい。

俊吾は照れたように笑ってるけど、笑いごとじゃない。



「良かったぁぁっ!海に沈められちゃうかと思った…っ!那岐よかったねぇぇっ」


「…沈まねえよ」


「さすが那岐さんっす!逆に沈める側っすもんね…!!」


「……えっ、笑えない、こわ!!」



だってドラマでこういうのってよく、アリバイを作るために沈めたりしてるから。

でも一安心だ。
いや、怪我人がいるから安心ではないけど…。



「とりあえず俊吾はこいつを先に運んで手当てしてやれ。絃は俺の車に乗せて戻る」


「はいっす!!」



肩を組んで戻ってゆく2人を見つめ、ぐーっと伸びをひとつ。

すーーっと潮の香りを胸いっぱいに吸い込んだ。



「でもいいね海っ!こんなところにもあるんだね!」


「…来たことねえのか」


「うん。施設にいたときは遠出の外出とか全然なくて」



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