光を掴んだその先に。




みんな歳が疎(まば)らだったから、高校生組と保育園組が同じことをできるわけがなく。

庭でカレーを作って食べたり、近くの公園に遠足に行ったり。

お泊まり会だって、毎日の生活がそんな感じだったから…。


その分クリスマスにお正月、七夕やお盆、そういう1年の行事を大切にしていたっけ。



「少し見てくか」


「えっ、いいの!?」


「ちょうど車停めてある方面だしな」



堤防を並んで歩けば、波が寄せて返す音を間近に見て聞くことが出来る。

少し大きな声で話さなければ波音に消されちゃうから、ジェスチャーを多く使ってコミュニケーション。


でもそこまで会話はなかった。



「わー!あっち見てよ!街がキラキラしてる!」


「そりゃな、夜だし」


「いやもっとロマンある返しはないの!」



なんて怒ったふりをしてるけど、ぜんぜん怒ってない。

むしろそんな時間が楽しいくらいだ。



「キラキラしてるものって遠くから見たほうが綺麗なんだね」


「…あぁ」



わ、すっごい綺麗だ。
ごめん、いまの言葉は訂正する。

こんなにも近くに夜景よりずっとずっと綺麗な人はいたらしい。



「これから行けるぞ」


「…え?」


「花見も祭りも、旅行だって俺たちは行くことが多い」



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