光を掴んだその先に。




キラキラ輝く瞳。

薄い唇が微かに開いて横に伸びて、揃った歯が見える。

形の良い高い鼻も、笑うとさりげなくできるえくぼも。


ここまで近くなければ見つけられないものだ。



「…うん。…那岐と…」



そう言いかけて波の音と海風が消した。

波の音がなかったとしても、小さな声だったから聞こえてはいないはず。


「うん」って肯定した返事はうなずいた動きで伝わっているだろうから。



「…俺と、なんだ」


「えっ、あっ、いや、なんでも!」



どうやら聞こえてたらしい。


───那岐と一緒にぜんぶしたい。


私は今、そう言おうとしていた。



「冷えたっ!脚さむいっ!車もどろっ」


「…だからスカートの下にジャージ履けっつったんだよ」


「やだよダサいもん!それじゃあお父さんと同じになっちゃうでしょ!」


「親子そろって楽しそうでいいだろ」



楽しくないよっ!馬鹿にされるだけだよ!!

那岐ってこうやって人をからかってくるところがある…。

くつくつ笑って、なにが面白いのか楽しいのかまったく分かりませんけど…!



「那岐!コンビニ寄って肉まん食べたい!」


「それだけなら使用人に作ってもらえ」


「あと温かい飲み物もっ!いま欲しいの!」



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