光を掴んだその先に。




前……?

あぁ、夜中にこっそり台所から取り出したときの…?

そうだ、そのときも確かバニラアイスを食べてたような。


……でもその1回だけのはずだ、那岐の前で食べたのは。



「確かにチョコと並んでたらバニラ取っちゃうかも」


「…施設でも食ってたのか」


「うん。みんなチョコが好きだったけど私は断然バニラだったから、喧嘩にならなかったっていう…」



ふっと、助手席の男は笑った。


海が近いからか、広さにしては車の少ないコンビニエンスストアの駐車場。

端に停めた高級車が何ともコンビニとはアンバランスなのに様になってしまう。



「いと、…おいしい?」



そんな私に改まって聞いてくる那岐。


聞いてくる、というよりは確かめてる?みたいな感じで。

それになんかちょっといつもの那岐じゃない優しい感じ。


そういえば、確か那岐もアイスは好きだったよね。



「うんっ!…那岐にもあげる」



木製スプーンで丁寧にすくって男の前に差し出すけど、その人はピタリと表情が止まった。


あれ…?
なにか変なこと言っちゃった…?


美味しい気持ちを全面的に伝えたつもりだ。

それにお裾分けというか、だって那岐のお金だし私だけっていうのも申し訳ないし……。



「……あっ!そっか!口付けちゃってるし嫌だよね!ごめんっ」



そうだ、これ間接なんちゃらになってしまうやつだ。

施設では弟や妹たちと当たり前のようにこういうものをしていたから、私はそこまで気にしない人だったけど…。


気にする人は気にするもんね……。



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