光を掴んだその先に。




「わっ」



けれど引っ込めようとした手はパシッと取られて、掴まれたまま目の前の形の良い唇へと向かう。


───ぱくっ。


そんな那岐らしくも那岐らしくない行動に胸がドキッと高鳴った。



「…ん、うまい」



本当にアイスは好きなんだ…。

誕生日のときもお父さんより黙々と食べてたし…。



「もう一口いる?あっ、でもぜんぶは駄目だよ!」


「あぁ」



表情を柔らかくさせて、私をじっと見つめてくる。

そんな優しい顔は私も知らなかった。


でもどこか泣きそうでもある瞳が気になるのに、踏み込んではいけないような気もして。



「では念願の…!いきまーすっ」



まだ温かいほかほかの肉まんをパカッと半分こ。

…………半分……こ……?



「ど、どうぞ」


「……これがお前にとっての半分か?」



差し出した片方は一言でいえば“皮”だった。

擬音で現せば“パカッ”ではなく“ぽろっ”。


私の手にする半分は中身が丸々と入ってて、お肉の塊がツルンと見えているほど。

どうも具材が片寄っていたらしい。



「発想の転換だよ那岐っ!肉まんだって皮が無かったら肉まんにはならないでしょ?だからすごく大切な部分で───」


「なら俺がそっちを貰う。お前はこの皮のみを味わって食え」


「え、やだっ!まさか私もこうなるとは思ってなかったんだもん…!」



初めての“半分こ”は見事に失敗したのだ。



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