光を掴んだその先に。




「ったく…」と、諦めてくれたらしい那岐はパクっと皮の部分を食べた。



「……」



なんかやっぱり申し訳なくなってくる。

そんな私の持つ半分へと、顔を近づけてきたと思えば───



「あーーー!!いちばん美味しい部分なのにっ!!」



パクっと、お肉の塊を齧った。

容赦なく齧って、半分のまた半分に減ってしまった私の肉まん。



「ばぁか」


「なっ!」



ニッと意地悪に笑った顔も、初めてかもしれない。

那岐はいつも微笑んだりため息を吐くように笑う人だったから。


そうして歯を見せて、勝ち気に笑う顔なんて見たことがない。

今日は知らない那岐の顔がたくさん見れる日だ。



「もー、仕方ないなぁ。…アイスと肉まん買ってくれたし今日は許してあげるけどっ」


「あのときのアイスも俺が買ったんだぞ」


「え、あの夜の?」



男は浅くうなずいた。


確かにあのとき冷凍庫には1つしか無くてレア感があった。

……ってことは、私はこの男が大切に買っておいたものを食べてしまったってこと…?



「そ、それは知らなくて……今度買っておきます…」


「お前に」


「え?」


「お前に買っておいたんだ。あれなら食うんじゃねえかと思ってな」



< 143 / 349 >

この作品をシェア

pagetop