光を掴んだその先に。




それならあのときから私がバニラアイスが好きだってことを知ってたの…?

あのときが初めて彼の前で食べたはず……だよね……?


ねぇ、那岐。

那岐は、那岐は……。



「那岐、…那岐は昔、私と手繋いでた男の子じゃないの…?」



この質問はもしかしたらずっと聞かないほうがいいかもしれないって思ってた。

でも、似てたから。

さっき優しくされた問いかけも、悪戯に歯を見せて笑ってくれた顔も。


ずっとずっと昔の記憶の中にいる、大好きだった少年に。



「あのねっ、子守唄、赤とんぼをいつも歌ってくれてて…!」



それは最近になって思い出した。

あのとき口ずさんだ赤とんぼは、園長先生でもみっちゃんでもない人が歌ってたって。


もっと高くて細くて爽やかな声を、私はずっと見上げるように聞いてたって。


目を閉じながら歌うその子は、たまに泣いてた。

静かに泣いてたんだよ。



「絃、…俺とお前は───」


「っ…!!」


「どうした?」



那岐のうしろ、窓の外。
ひとりの男の影が横切った。

その男はコンビニから出てくると、そのまま反対側へ停めている車に乗り込んでゆく。


思わず那岐の膝に身を乗り出してまでも、その先を見つめた。



< 144 / 349 >

この作品をシェア

pagetop