光を掴んだその先に。
「ごめん那岐っ!ちょっと待ってて…!!」
「は?おい、」
間違いない。
だってそんな人、中々いないから。
『帰宅途中の俺に話しかけてきた男がいてさ、…頬に傷があるんだ、ナイフ痕みたいなもの』
顔に傷がある男なんか、珍しい類いだろう。
そして何より───佳祐に似ていた。
「待って…!!桜木っ!!あんた桜木でしょ…!?」
その車へと走り向かう。
ドアを閉める寸前、男は私にふと気付いた。
「誰だァ?なんで俺の名前を知ってんだ」
「…この人が佳祐の……、」
「んん?けいすけ?嬢ちゃん佳祐の女か?」
それは親として息子の知り合いの少女を見るものではなく。
男として女を見つめる眼差しだった。
「佳祐は…、佳祐は……ずっと苦しんでる…っ」
ぶつけたい思いは上手く放てなかった。
小さなときから泣いていた男の子が私の中にいる。
身内にも酷い言葉を浴びせられて、いつもいつも布団の中で踞って泣いていた。
「はっ、最高だったなァ…、俺の子だと知ったときのあいつの目。俺の嫌いな女にそっくりだったよ」
まぁその女は犯してやったがな───と、男はゲラゲラと笑う。
人間じゃないと思った。
世の中にはどうしてこんな存在が生まれてしまうんだろうって。