光を掴んだその先に。
「……っ…、」
声が出ない。
怒りを通り越して呆れていた。
そんな熱を冷ますかのようにぶわっと海風が吹いて、私の前髪が風で上がると、男は何かを発見して微かに目を見開く。
そしてニタァと、気持ち悪い笑みを浮かべた。
「…ほう、いい女になったじゃねェか嬢ちゃん」
「…え…?」
「いつかこんな日が来るんじゃねェかとは思ってたが、まさかもう1人のガキも一緒なのか?」
唖然と立ちすくむ私を置いて、男はそのまま車を走らせて消えた。
どうして私のことを知ってるの…?
どうして私を見て笑っていたの…?
「もう1人のガキって……だれ……?」
そしてあの男は佳祐の父親だ。
間違いない、それは確信された。
「絃!なにがあった…!」
サァァァァと風が揺れるように背中に立った那岐は、微かに肩を上下に揺らしている。
恐る恐る振り向くと、私の異変にどこか気づいたのか言葉を待っていた。
「那岐、佳祐のお父さんがいた…、佳祐の、お父さんがいたの、…ここに、」
自分の左頬に指を持ってゆく。
スッとなぞるように這わせ、言葉で上手く紡げないぶんジェスチャーで精一杯伝える。
「…ここに……ナイフ痕がある男……、」
その瞬間。
誰よりも目を見開いたのは那岐だった。